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「女川とれたてさんまお振舞イベント」レポート

「女川とれたてさんまお振舞イベント」レポート (1/1)

 2015年10月12日、宮城県仙台市にあるキリンビール仙台工場にて、「女川とれたてさんまお振舞イベント」が開催された。

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イベントの会場となったキリンビール仙台工場。震災当時は地域住民の避難所としても機能した

 このイベントは、復幸まちづくり女川合同会社(以下、女川合同会社)を中心とした女川町の人々が、女川港で水揚げされた新鮮なさんまを炭火で焼き、工場見学者に振る舞うというもの。イベント当日は晴天に恵まれ、秋らしい真っ青な空の下、用意された千匹のさんまが次々と焼かれていった(復幸まちづくり女川合同会社に関する記事はこちら:http://kizuna-nipponfoundation.info/2015/06/post-55.html)。

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イベントに用意された女川町の新鮮なさんま

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煙が立ち込める中、一生懸命にさんまを焼く女川町の皆さん

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千匹のさんまは炭火で次々と焼かれていった

 「復興応援 キリン絆プロジェクト」では、今まで様々なかたちで女川町への支援を行ってきた(「復興応援 キリン絆プロジェクト」による女川町への支援の記事はこちら:http://kizuna-nipponfoundation.info/2013/11/post-17.html / http://kizuna-nipponfoundation.info/2013/11/post-18.html)。
 キリンビール仙台工場でも、「復興応援 宮城の元気と笑顔情報発信 第一弾:女川町」と題し、工場見学者用ショップで「あがいん(AGAIN)女川」ブランド(※)の水産加工品を販売したり、工場内にあるレストランで女川食材を使ったメニュー提供するなど、女川町の魅力を紹介している。また、工場のエントランス付近に設置したパネルやホールでの映像を通して、新たなまちづくりに取り組む女川町を多くの人に知ってもらう試みも続けてきた。
 今回は復興応援の第一弾が11月でいったん区切りを迎えるということで、女川町から感謝を込めて、仙台工場の見学者へさんまが振る舞まわれることになったのだ。

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工場見学者用ショップで販売されている「あがいん(AGAIN)女川」ブランドの水産加工品(左)とエントランスに展示されている女川町のパネル

 イベントの冒頭、キリンビール仙台工場の柴田実・工場長に話を聞いてみた。
 「今回のイベントは女川町の皆さんから提案があったのですが、とても嬉しかったです。仕事を越えた心のつながりができたことを実感しました。復興応援の第一弾として行われている工場内での展示・販売は来月までですが、これからも女川町の魅力を発信する機会を作っていきたいですね。被災地の復興の過程を伝えていくことも、私たちの使命だと感じています」

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復興の過程を伝えていくことの大切さについて話す柴田・工場長

 また、総務広報を担当する山田祥子さんは、自らもイベントスタッフとして忙しく動き回りながら、仙台工場の復興支援について話してくれた。
 「工場には、県内4割・県外6割ほどの割合で、平日でも常に300~500人の来場があります。県外は東北6県からが多いですが、関東圏からもバスツアーなどでたくさんの方が来訪してくれます。仙台工場は地元の人々から親しまれているだけでなく、多くの人が集まる場所ですから、復興のために何かできないかと色々考え、実行してきました。今回のイベントでは、来場者から『女川町のさんまを食べられるだけでなく、わざわざ町の人たちがここまで来て焼いてくれたことに感動した」という声が聞かれました。私も同感ですね」

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仙台工場の復興支援について説明する総務広報担当の山田さん

 一方、キリンビールマーケティング株式会社の伊藤博之・執行役員東北統括本部長は、復興支援のあり方を力説してくれた。
 「大切なのは、助成金だけにとどまらないことだと、平素から社員に話しています。復興支援には被災地を『知る』ことが不可欠。私も女川町を実際に訪れて、町の魅力だけでなく、復興の現実も肌で感じました。イベントで提供されたさんまも、表面が香ばしくパリッとしていて旨味があふれ、女川町の魅力を五感で感じることができます。『女川町のさんまは炭だけでは焼けない、熱い心が大切』と焼き手が言っていましたが、まさにその通りだと思います。石巻線も復旧しましたし、ぜひ皆さんには女川町に足を運んでほしいですね」

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伊藤・執行役員東北営業統括本部長は、復興支援には金銭面の支援だけでなく、
被災地を知り、肌で感じることが重要だと考えている

 そして今回のイベントの中心的な役割を担った、女川合同会社の阿部喜英・代表にも話を聞いてみた。
 「キリングループをはじめ、多くの皆さんのご支援で完成した、水産業体験館『あがいんステーション』の運営も好調で、自分たちの計画が少しずつ実現していると感じます。水産加工品の物販だけでなく、小学生の水産業体験や地元の主婦たちによる魚のさばき方講座など、体験イベントも好評です。普段あまり魚を食べない人も、実際に漁を見ると食べてみようと思えるし、思ったより簡単に魚をさばけるとわかれば、家でも食べるようになるはず。女川町の名物であるホヤも、苦手な人が多いですが、新鮮な物を食べてみるとその美味しさに気付いてくれます。女川町の暮らしはすべて、たどっていくと水産業に紐づきます。これからも魚食の普及に努めたいですね」

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女川町の復興のため、魚食を普及させることに意気込みを見せる阿部・代表

 また、女川合同会社の岡明彦さんは、女川町のさんまが美味しい理由について話してくれた。
 「昔から、『女川町は目利きが違う』として水産業界で一目置かれてきました。女川町の買受人の間では、『悪いものは安くても買わない。その代わり、良いものであれば多少値が張っても買う』という伝統が受け継がれています。だから漁師の側も、女川町には自信を持って出せるものだけを厳選して持って来るという、良い循環ができているのです。それがさんまの味にも顕著に表れています。今年のさんまは全体的に小ぶりですが、イベントに持ってきたのはどれも大きく良い物ばかり。良いさんまは、クチバシと呼ばれる口先の部分がきれいな黄色をしており、尻尾を持ってみると、しならずにピンと立つのが特徴なんですよ」

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女川町の買受人達の目利きの良さが、さんまの味にもつながっていると岡さんは言う

 今回のイベントの開催時間は10時から16時半までを予定していたが、千匹のさんまが早々に無くなってしまうことを避けるため、あえて大々的な告知はしなかった。当日に仙台工場を見学に来た来訪者の多くは、イベントのことを知らなかったので、嬉しいサプライズとなったようだ。

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さんまの焼き場には常に多くの人が列を作っていた

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さんまを受け取った人たちは、屋外に設置されたテントや工場内の飲食スペースで、
秋の味覚を堪能していた

 イベントの途中、3歳の子どもを連れて見学に来ていた母親に話を聞いてみた。
 「町内会のツアーで見学に来ました。工場に来て初めてさんまのイベントがあることを知り、驚きました。子どもは今までさんまを食べたことがなく、ふだんも魚自体あまり食べないのですが、このさんまはおいしいと言って完食していました。さんま自体がおいしいのはもちろん、こうして炭火で焼くのは家庭では簡単にできないことなので、子どもにも良い経験をさせてあげられたと思います」
 また、隣の席でさんまを食べていた夫婦は、震災後に女川町を訪れたことがあるそうだ。
 「仙台市に住んでいますが、実際に足を運ぶことが支援になると思い女川町を訪れました。高台にある病院に行き、ここまで津波が来たという印を見たときは衝撃でした。他県の友人には『メディアで見る限り、もうかなり復興しているね』と言われることもありますが、まだまだこれからだと個人的には強く感じています。また、どんなに復興が進んでも、決して元に戻るわけではないというのも、忘れたくないですね」
 工場見学というと、訪れるのは大人ばかりというイメージもありそうだが、コメントをくれた親子に限らず、仙台工場では小さな子どもを連れた見学者も多く見られた。「工場内ではソフトドリンクの試飲なども行っているので、ぜひご家族でどうぞ」と、総務広報担当・山田さんも話している。また、個人で訪れている二十~三十代の若い見学者も多数いた。昨今の工場見学ブームの影響もあってか、個人での見学者はここ数年増えているそうだ。
 今回の「女川とれたてさんまお振舞イベント」も大好評で、用意された千匹のサンマは、午後3時には一匹残らず完食されていた。
 イベントの終盤、キリン株式会社のCSV本部CSV推進部絆づくり推進室で、渉外担当専任部長を務める渕田紳一氏に、イベント実現までの経緯を聞いてみた。渕田・渉外担当専任部長によると、今回のイベントは女川町の展示の打ち合わせをしている際、女川合同会社の皆さんから出た「こんなことできたらいいね」という一言がきっかけになったと言う。
 「ビール工場でさんまを焼くなんて前代未聞。工場でのイベントは制約が多く難しいなか、『できないだろう』ではなく、『なんとかやってみよう』という姿勢で始めたので、様々な問題を解決できました。さんまの運搬の問題や消防署からの許可など、前向きな姿勢でクリアしていき、イベントを実現できたことが嬉しいです」

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イベントが実現されるに至った経緯を説明する渕田・渉外担当専任部長

 キリングループと女川町の絆は、今回のイベントを通して、また一段と深まったようだ。

(※)女川町が復興を加速させるために立ち上げたブランド。「あがいん」は女川地方の方言で「どうぞお召し上がりください」を意味する。また、英語の「AGAIN」には、女川町を再び笑顔あふれる町にしたいという願いが込められている。英語の「AGAIN(あげいん)」を「あがいん」と読むことで、2つの意味を掛け合わせたブランド名にした。

取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛、取材・文/宮澤泉

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