復興応援キリン絆プロジェクト

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6次化商品で水産業の未来を拓く

相馬双葉漁業協同組合 贈呈式レポート (3/3)

いくつもの壁を乗り越えた先にあるもの

 事業方針の発表が終了すると、「復興応援 キリン絆プロジェクト」水産業支援の贈呈式の時間となった。
 はじめに、キリンビールマーケティング株式会社の福島支社長を務める、橋本岩男から主催者挨拶が行われた。
 「今回のプロジェクトは、『浜の漁師飯とかあちゃん飯』を商品化するということで、どんなおいしい商品ができ上がるのか今から楽しみです。皆さんの開発した商品で、たくさんの家庭や飲食店を彩ってほしいと思います。キリングループでは現在、47都道府県すべてで異なるコンセプトの『キリン一番搾り』を作っています。コンセプトを決める際には、福島にゆかりのある人と一緒にワークショップも行いました。福島県の『キリン一番搾り』は1ヵ月後に発売予定です。近い将来、皆さんが作った6次化商品と一緒に、福島県の『キリン一番搾り』を味わえたら嬉しい限りです。福島支社としても、皆さんの商品の販路拡大に向けて、営業部隊として協力させて頂きます」

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「6次化推進協議会」の商品とキリングループの商品を一緒に味わえることを期待する橋本・福島支社長

 また、日本財団の海洋グループで上席チームリーダーを務める、荻上健太郎からも主催者挨拶が行われた。日本財団はキリングループが拠出した寄付金で基金を創設し、支援金の助成を行うことで被災地の水産業支援をサポートしている。
 「キリン絆プロジェクトの助成対象に選ばれたこと、誠におめでとうございます。今回のプロジェクトは、消費者の目線に合わせた商品を開発し、ブランディングをするという、新たな事業への挑戦です。風評被害の影響は大きく、ともするとオシャレなパッケージや販促ツールを使って、見た目からよくしようと思うかもしれません。しかし、皆さんには地元で培ってきた宝である『浜の漁師飯・かあちゃん飯』があります。ぜひその伝統的な料理を、消費者の目線に合わせて新しく開発してください。これから皆さんが持つ力を結集して、切磋琢磨しながら素晴らしい商品を開発されることを期待しています」

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荻上・上席チームリーダーは見た目ではなく、商品の中身で勝負することが大事だと考えている

 続いて、キリン株式会社CSV推進部絆づくり推進室の野田哲也・室長より、贈呈内容の説明が行われた。今回、相馬双葉漁協の「6次化推進協議会」に助成される2500万円の支援金は、商品開発、ブランディング活動、販路開拓、情報発信などに活用される。
 贈呈内容の説明が終わると、キリンビールマーケティング株式会社の橋本・福島支社長と日本財団の荻上・上席チームリーダーから、相馬双葉漁協の狩野・副組合長と「6次化推進協議会」で副会長を務める菊地さん、相馬双葉漁協女性部相馬支部長の佐藤靖子さん、相馬双葉漁協女性部鹿島支部長の桑折(こおり)澄子さんに目録が贈呈された。

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目録の授受を行った、(左から)橋本・福島支社長、狩野・副組合長、菊地さん、佐藤さん、桑折さん、
荻上・上席チームリーダー。佐藤さんと桑折さんは「浜のかあちゃん飯」のチームリーダーを務めている

 「相馬双葉地方のブランド力を取り戻すためには、培ってきた伝統と新しい創造を掘り起こすことが必要です。今回のご支援を機に、活動をさらに活性化させ、必ずプロジェクトを成功に導きたいと思います。それが地域の復興にもつながることでしょう。風評被害に負けることなく、相馬双葉地方の関係者と漁業者が一丸となって、全力でプロジェクトに取り組むことをお約束します」
 受贈者の代表挨拶に立った狩野・副組合長は、地域と漁業者が一丸となって全力でプロジェクトに取り組むことを約束してくれた。
 最後に、福島県漁業協同組合連合会の中田研二・常務理事から、激励の言葉が贈られた。
 「震災から5年が経ちましたが、福島県では原発事故の影響により、震災前の漁業水準からはほど遠い位置にあります。そんな厳しい状況の中でも、相馬双葉地方では試験操業に積極的に取り組んでいます。心より敬意を表します。近日中にヒラメやマアナゴの出荷制限が解除されるなど、試験操業が可能になる魚種も徐々に増えてきています。試験操業で獲れる魚介類を使って、6次化商品を開発するという今回のプロジェクトは、福島県の復興に大きく寄与することでしょう。プロジェクトの成功を願っています」

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激励の言葉を贈る中田・常務理事

 贈呈式が終了すると、試食会の時間となった。試食会場には「ツブ貝の生姜煮」「ナマコボイル」「イカの味噌漬け」「イナダの漬魚」「タコのやわらか煮」「イカメンチ」の6種類の試食品が登場した。

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きれいに盛り付けされた6種類の試食品

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試食会のために、「6次化推進協議会」の皆さんができたての料理を準備してくれた

 「ツブ貝の生姜煮」は6種類の試食品の中で、唯一、販売が始まっている商品。月に一度、女性部員が集まって手作りしたものを、常磐道の南相馬鹿島サービスエリアで販売している。生姜で煮込んだツブ貝は風味が豊かで、食感もやわらか。評判も上々で、サービスエリアでは売り切れることもあるほか、東京の居酒屋からも引き合いが来ているという。

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売り切れになるほど販売が好調な「ツブ貝の生姜煮」

 「ナマコボイル」と「イカの味噌漬け」は、若手漁師が船上で「まんま炊き」を担当していたときに作った料理を再現した商品。ボイルしたナマコは身の固さも取れ、お酒のつまみにぴったり。漁師ならではの味付けがされたイカも、ご飯と食べてもよし、お酒のつまみにしてもよしの一品だ。
 ブリの稚魚であるイナダを使った「イナダの漬魚」は、震災前から安値で取引されることの多かったイナダを、付加価値を付けて買ってもらえないかと、若手漁師たちが考えた商品。試食会には、オリーブオイルやカレーなど6種類の味で漬けられたイナダが登場。商品化できる味付けを試行錯誤しているという。
 「タコのやわらか煮」と「イカメンチ」は、漁師の妻たちが家庭で作っていた料理をヒントに開発された。タコはやわらかくするため、すりこぎ棒で叩いてから、出し汁や醤油を加えた炭酸水で味付け。「イカメンチ」は相馬双葉地方のスルメイカと玉ねぎを主原料にしたもの。メンチではあるが、イカの食感もしっかり残っている。どちらもまだ試作段階のため、これからも改良をしていく予定だ。

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試食会では、「6次化推進協議会」のメンバー自ら商品説明を行った

 試食会に参加した人たちからは、「今まで食べたことのない味」「どの料理も食感が特徴的」「ビールのつまみに合いそうなものばかり」など、試食品を称賛する声が相次いだ。

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試食会は多くの人たちで賑わった

 今後の課題は、開発商品の原料となる魚介類をいかに確保できるかだという。
 「商品の原料は試験操業で獲れた魚介類ですが、漁に出られる回数が制限されているため、漁獲量も限られてしまいます。出荷制限が解除されていない魚介類は、試験操業すらできません。本来なら、相馬双葉地方で獲れた魚介類ですべての商品を作りたいのですが、漁獲量が上がるまでは不足分を他産地のもので補う場合があるかもしれません」
 相馬双葉漁協で共済課長補佐を務める高橋さんは、原発事故の影響がもたらす、原料確保の難しさを語ってくれた。例えば、「イカメンチ」の具材には風味をよくするために青ノリが使われているが、松川浦の青ノリは出荷制限が解除されていない。そのため、現在は他産地の青ノリを使わざるを得ないという。
 また、根強く残る風評への対策も行わなければならない。
 「私たちが過去に実施したアンケート調査では、6割の人は検査して問題なければ、福島県産の魚介類を買ってもよいという結果が出ました。これは裏を返せば4割の人たちは安全が証明されても買ってくれないわけです。この状況を打開するために、当面の商品ターゲットを相馬双葉地方の主婦にしました。風評に対してもっとも敏感だと思われる、地元の主婦から認められれば、他の地域にも展開できると考えたからです」
 高橋さんによれば、改良を重ねた試作品が商品として完成次第、相馬双葉地方の飲食店や旅館などに提供していく予定だという。
 原料確保の難しさや原発事故による風評など、「浜の漁師飯 浜のかあちゃん飯推進プロジェクト」の前には大きな壁が立ちはだかっている。だからこそ、漁業者だけでなく地域が一丸となって、プロジェクトに取り組むことが重要なのだろう。商品を完成させるまでの道のりも険しいに違いないが、「6次化推進協議会」から生まれた商品が地元の主婦たちに認められ、県内外で当たり前のように買ってもらえる日が訪れることを期待したい。

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相馬双葉地方の水産業を復活させるために、地域一丸となって頑張ります!

(注)第1次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第2次産業や第3次産業にまで踏み込むこと。

取材協力/有限会社パワーボール、写真撮影/和田剛

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