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郷土料理の商品化で食文化をつなぎ地元に誇りを取り戻す

「小名浜さんま郷土料理再生プロジェクト」事業報告会・新商品発表会レポート (3/3)

どんな困難があっても前に進むという決意

 事業報告会が終わると試食の時間となった。試食会場には「いわきサンマリーナ研究所」が商品化した「さんまポーポー焼き」「さんまふわっとみりん干し」に加え、商品開発中の「さんまポーポーぎょうざ」「さんまポーポーつみれ」「さんまポーポーそぼろ」も登場した。

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試食会場で提供された商品の数々

 「さんまポーポー焼き」と「さんまポーポーぎょうざ」は、さんまであることはもちろん、魚肉を使っていることすら感じさせないような、香ばしい味とやさしい食感に仕上がっている。これなら魚に抵抗がある子どもたちも、すんなりと食べることができるだろう。
 対照的に、「さんまふわっとみりん干し」はさんま本来の旨味を味わえる一品。みりんをベースに適度に味付けされており、ご飯のおかずとしても、お酒のおつまみとしても重宝しそうだ。
 おにぎりと一緒に提供された「さんまポーポーそぼろ」は、「さんまポーポー焼き」をそぼろにしたもの。ご飯が進むこと間違いなしの商品だ。小名浜の家庭ではご飯と一緒に食べるだけでなく、卵焼きに入れたり、トーストに乗せたりもするという。
 そして地元野菜と一緒に鍋汁で煮込まれた「さんまポーポーつみれ」は、食べた瞬間、さんまの風味が口いっぱいに広がる。鍋汁にもさんまのダシがしっかりと溶け込んでいる。これからの季節、鍋物料理や汁物料理には欠かせない一品になるだろう。
 試食会の参加者に感想を聞いてみると、「魚のくさみがなく食べやすい」「子どもたちも好きになると思う」「骨がなく栄養価も高いので学校給食にすればいい」「とにかくおいしい」など、どの商品に対しても高く評価する声が相次いだ。

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試食会の参加者からは「どの料理もおいしい」という声が多く聞かれた

 試食会の途中、「小名浜さんま郷土料理再生プロジェクト」のメンバーであり、プロジェクトの情報発信をサポートしているヘキレキ舎の小松理虔さんに話を聞いた。いわき市出身の小松さんは、震災前、福島を離れて会社員をしていたが、2012年に地元に戻りかまぼこ会社に就職。情報発信の仕事を続けたあと、2015年に独立した。
 「震災後、友人たちと立ち入り制限区域ギリギリの海辺まで足を運び、放射能を測定する活動をしていました。そこで感じたのは、漁業に対する危機感です。原発事故の影響で、福島県は漁業資源そのものを失いかけていました。その後、同じように危機感を持つ上野臺さんと出会い、共感し、プロジェクトや商品の魅力を伝えるお手伝いをすることになりました。情報発信はSNSやイベントなどを通じて、県内だけでなく県外へも行っていますが、まずは地元の人々にプロジェクトや商品の魅力に気付いてもらうことが大事だと考えています。魅力に気付くことで、県外の人に伝えたり、ギフト商品として贈るようになったりするはずです。それは地元への誇りを取り戻すことにもつながるでしょう。そのためにも、『情報の地産地消』を常に心がけています」

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「情報の地産地消」の重要性を訴える小松さん

 そして試食会の最後、上野臺さんにプロジェクトや商品に対する思いを語って頂いた。
 「ポーポー焼きやみりん干しなど、郷土料理をベースにした商品を作ることは、震災前から考えていました。震災後、日本でさらに魚食離れが進むと感じ、このままではダメだと思いました。郷土料理の商品化を進めたかったのですが、資金や人材など多くの壁がありました。そんなとき、『キリン絆プロジェクト』の存在を知り、背中を押してくれるきっかけとなりました。商品開発の過程では、幅広い人に受け入れてもらえる味に仕上げることが大変でした。郷土料理であるがゆえに、各家庭で好みや味付けが異なるからです。さんまと様々な野菜の相性を試すなど、試行錯誤を続けました。今回、正式リリースされたのは2商品ですが、現在開発中のものも含め、1品でも多く世に送り出したいと思います」

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商品開発は試行錯誤の連続だったと話す上野臺さん

 また、商品開発の過程では「キリン絆プロジェクト」による手厚いサポートにも助けられたという。
 「助成金という資金面だけでなく、商品開発のノウハウやデータに基づいたマーケティング手法など、多くの学びと気付きを得ることができました。『キリン絆プロジェクト』の皆さんは、毎月のようにいわき市まで足を運び、私たちプロジェクトメンバーとミーティングをしてくださったのです。商品がある程度できあがってからは、売り場や商談会の紹介もしてくださいました。商品というのはただ良いものを作って売るのではなく、その魅力をしっかりPRしていくことも大事なんだと気付きました。本当に勉強になりましたね」
 今回の事業報告会と新商品発表会は、上野臺さんならびにプロジェクトメンバーにとっての決意表明でもあったという。2015年から続く不漁により、今年も原材料となるさんまを確保するのは極めて困難な状況にある。本来は小名浜漁港で水揚げされるさんまを使用したい上野臺さんたちも、苦渋の思いで他地域からの調達を余儀なくされている。今後もさんまの水揚げ量が復活するという保証はない。それでもこのプロジェクトを続けて行くのか。その問いかけにイエスの答えを出したからこそ開催した、事業報告会と新商品発表会だったのだ。
 「スーパーでテスト販売していた『さんまポーポー焼き』を、3歳の女の子が大好きになってくれて、今では家の冷蔵庫にないとお母さんに買いに行かせるそうなんですよ」
 上野臺さんは目を細めながら小さな物語を語ってくれた。
 地元の水産業を復活させ、復興を後押しし、食文化を後世へとつなぎ、かつての誇りを取り戻すために......。上野臺さんたちが知恵と努力と愛情を込めて生み出す商品たちが、地域の人々に愛され、いつしか地域を超え、日本中の人々に愛されることを期待したい。

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小名浜のさんまをよろしくお願いします!

 (注)モニタリング検査結果から安全が確認されている魚種に限定し、小規模な操業と販売を試験的に行い、出荷先での評価を調査して、漁業再開に向けた基礎情報を得ること。

 写真/和田剛、取材協力/有限会社パワーボール

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