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「いわきの農業・水産業4 団体」事業成果報告会・新商品発表会レポート (2/3)

多彩なストーリーに満ちた商品の数々

 来賓挨拶が終わると、4団体から事業成果の報告が行われた。
 最初に登場したのは「いわき社中グループ」の真木しゅんすけさん。同団体が開発したのは、出汁入り鍋用干物の「鍋干物」だ。

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「いわき社中グループ」の真木さんと同団体が開発した「鍋干物」

 いわき市では古くから鮮魚だけでなく干物も人気があり、各家庭で魚の天日干しをすることも珍しくなかった。しかし震災の影響や人手不足、魚食文化の低迷などにより、干物を取り巻く環境は厳しさを増していく。真木さんたちは「このまま手をこまねいていてはダメだ」と、「キリン絆プロジェクト」の支援を受けて新たな需要を開拓することを決意する。
 干物は元々、10月から2月にかけての寒い時期に販売が落ち込む傾向にある。年末年始の商材や鍋物商品の登場などにより、干物の売り場が縮小されてしまうからだ。「いわき社中グループ」ではその状況を逆手に取り、鍋物に使える干物を開発することにした。
 鱈や鮭など、鍋物に入る魚は身崩れしやすく、「お出汁」になってしまいがち。しかし干物であれば、熱いお湯の中でも身崩れせずに最後まで魚の存在感を残すことができる。そこで真鱈・秋鮭・赤魚の3種類の「鍋干物」を開発。濃い味付けで旨味を凝縮した干物を作り、それを水に入れ加熱するだけで出汁が鍋全体に広がるというすぐれものだ。
 「鍋干物」は魚の仕入れ、試作品の開発、商品の販売を3つの会社が協力して行うことで実現した。すでに福島県だけでなく首都圏などでも試験販売を始めている。「骨があると子どもが食べづらい」「パッケージがわかりにくい」など消費者の声を受け、骨抜き魚にしたりパッケージデザインを変更するなど改良も進めてきた。大手新聞や全国ネットのニュース番組に取り上げられるなど、商品への注目も高まっているという。
 「『キリン絆プロジェクト』によるご支援を通じて、たくさんの流通業者の方々と出会えたことで、販路拡大の可能性も広がりました。本当に感謝しています」
 真木さんは事業成果の報告を感謝の言葉で締めくくった。
 いわき市の魚であるメヒカリを、商品開発の魚種に選んだのは「いわき市水産物6次化推進協議会」。登壇した新谷渡さんによれば、いわき市民のソウルフードであるメヒカリを使って新商品を開発することで、地域も漁業も元気にしたかったという。

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商品開発の魚種にメヒカリを選んだ理由を説明する新谷さん

 淡白な白身とふんわりした食感がおいしいメヒカリ。いわき市では唐揚げで食べるのが一般的だった。しかし震災により水揚げは停止。試験操業(※)の開始後も水揚げ量は激減したため、県外への販路を失っただけでなく県内でも食べる機会が減ってしまう。
 そこでメヒカリを使って過去にはない商品を作ることを発案。子どもでも食べられるよう内臓や骨を取り除き、調理も手軽にできるよう味付き揚げ粉をまぶしたフリットの冷凍商品にした。これなら油を使わずフライパンで加熱調理するだけで食べられる。また、商品名も今までにないインパクトの強いものにしようと、「セレブなメヒカリ」に決定した。

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まったく新しいメヒカリ商品として開発された「セレブなメヒカリ」

 販売はまだ始まっていないが、のぼりやチラシ、冊子などの販促物は出来上がっている。試食も都内や県内ですでに行われていて、アンケート結果から味やパッケージにも改良を加えている。最初は手作業による少量生産から始めて、2年後に予定されている加工場が完成次第、生産量を増やしていく考えだ。
 そして魚で地元を笑顔にするためのプロジェクトを展開しているのは、「いわき水産商品開発協議会」だ。
 「震災以降、福島県の水産物は安全安心なのかという心配が先に立つようになりました。でも安全安心なだけでなく、抜群においしいものを作って食べてもらえれば、余計な心配もせずみんなが笑顔になると考えたのです」
 会長の鈴木健寿さんはプロジェクトに込められた思いについて語ってくれた。

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魚で地元を笑顔にしたいと話す鈴木さん

 商品開発の対象に選んだのは、いわき市で水揚げの多いアンコウを使った「どぶ汁」だ。「どぶ汁」は地元に古くから伝わる料理で、漁に出た漁師たちが貴重な真水を使わず、野菜とアンコウから出る水分だけで調理したのが始まり。以前は一般家庭でも作られていたが、アンコウの肝から出る味のクセが強いこともあり、次第に料亭や旅館などで郷土料理として出されるだけになった。
 震災前、水産物の卸売業を営む鈴木さんは何か新しい商品を見つけようと、市内の料理店をリサーチしていた。そのとき、感動を覚えるほどおいしい「どぶ汁」に出会う。そこで店の料理長に直談判し、若者や子どもでも食べられる、親しみやすい味の「現代版・どぶ汁」を開発することにした。
 その後、震災が起きたことで「現代版・どぶ汁」の開発は窮地に立たされるが、「キリン絆プロジェクト」の支援を受け、「さかなでいわきを笑顔にするプロジェクト」として再出発することに。材料は徹底して地のものにこだわり、アンコウの切り身だけでなく野菜もいわき市産のネギとダイコンを使って、具材入りの鍋つゆ商品を開発した。

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「キリン絆プロジェクト」の支援を受けて完成したアンコウの「どぶ汁」

 商品開発で特に苦労したのが、アンコウ特有の臭みを取り除くこと。料理店の料理長だけでなく、鈴木さんたち「いわき水産商品開発協議会」のメンバーも一緒になって、いくつもの試作品を作った。最終的に納得のいく味に仕上がるまで4ヵ月を要したという。
 また、最初はコストに縛られず、とにかく最高の味を目指した。西のフグと並ぶ東の高級魚とされるアンコウを使うからこそ、高級な商品として完成させたかったのだ。
 現在は月700パックを製造し、100パックほどを市内の鮮魚店やスーパーで販売している。今年中には製造と販売を1000パックまで増やし、来年には2000パック、再来年には3000パックと数を増やしていく予定だ。
 最後に登場したのは、唯一の農業団体である「F'sキッチン」。団体の代表であり、フランス料理店のオーナーシェフでもある萩春朋さんは、震災後、いわき市をはじめとする福島県の野菜が売れなくなり、生産者が泣く泣く畑に戻す姿を目の当たりにした。
 そうした野菜を活用できないかと考える中で、ドレッシングの材料にすることを思いつく。焼きネギやニンジンを使って開発したドレッシング商品は、味が良いと評判になり、年間3000本ほどが売れるまでになった。その後、個人の活動からさらに広がりを持たせようと、「キリン絆プロジェクト」の支援を受けて農業団体を立ち上げた。

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売れなくなった野菜でドレッシングを作ることを思いついた萩さん

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事業成果報告はスライドを使って行われた

 団体のメンバーには生産者である農家と料理人が混在している。「キリン絆プロジェクト」の支援で購入した機材を使って、生産者と料理人が一緒に商品を開発。開発現場に一般消費者を招いて試食してもらい意見を聞くことで、商品の改良にも役立てている。
 「私たちは様々な商品を開発していますが、作って終わりにしてはいけません。農業と食べる人をつなぐことが使命だと考えています。人々の口を満足させる地域は元気になるとも言いますので、このプロジェクトを通じていわき市だけでなく福島県全体を元気にしたいです」
 萩さんはプロジェクトへかける意気込みを熱く語ってくれた。
 そして4団体による事業成果報告が終了すると、「キリン絆プロジェクト」の関係者から激励のメッセージが贈られた。
 最初に登壇したのは、福島県の農林水産部で食産業振興監を務める石本仁さんだ。
 「4団体の事業成果報告を聞きましたが、福島県の食文化を守り、地域を活性化したいという熱い思いを感じ、とても心強いです。福島県では平成22年に6次化戦略を策定し、『人づくり』『絆づくり』『仕事づくり』の3本を柱に施策を進めています。そうした中、福島県に対しキリングループがご支援をくださったことで、県内の6次化商品がメディアでも多く取り上げられるようになりました。その中でも、いわき市は6次化のポテンシャルが特に高いと感じています。いわき市から世界にはばたく商品が生まれ、福島県をけん引するような地域産業へと育つことを期待しています」

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4団体の取り組みが福島県をけん引するような地域産業へと育つことを期待する石本・食産業振興監

 また、日本財団の荻上健太郎・経営企画部長からもメッセージが贈られた。日本財団はキリングループが拠出した寄付金で基金を創設し、支援金の助成を行うことで被災地の水産業支援をサポートしている。
 「『キリン絆プロジェクト』では実に様々な取り組みが行われていますが、大きな柱として『地域ブランドを作ること』『復旧から復興そして未来へつなげること』があります。『キリン絆プロジェクト』をサポートする立場として、その中でいつも大切にしてきたのが『4つのC』の問いかけです。1つ目の『Challenge』は、新しい挑戦をしているかという問いかけになります。2つ目は『Customer』。これは常にお客様の立場から考えているかを確認するものです。3つ目の『Collaboration』は業種を超えて協働を大切にする考え方で、最後の『Community』は地元に愛される地域ブランドの創出を意味します。皆さんの挑戦がお客様目線や業種を超えた協働を経て、地域にとって大切な事業となることを期待しています」

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「4つのC」の問いかけについて説明する荻上・経営企画部長

 そして最後に、「キリン絆プロジェクト」の農業支援をサポートしている、日本フィランソロピー協会の髙橋陽子・代表理事が挨拶に立った。
 「本日の会を迎えるまでに、多くの紆余曲折があったと思います。4団体の皆さんの努力に心より敬意を表します。私からは『5つのK』を題材にお話しさせて頂きます。まずは『郷土愛』。皆さんの活動も地域への思いがあればこそだと思います。次に大人の『気概』は次世代を担う子どもたちにも刺激を与えます。また、『謙虚さと感謝』は、自分の力だけではできないことを認識し、仲間を信じて力を合わせる大切さを意味します。震災や風評被害の逆風の中、新しいことに挑戦し成功させるには『根気』も必要ですよね。そして最後は『KIRIN』です。長年に渡るキリングループの支援や下支えがあったからこそ、4団体の皆さんも今日を迎えられたと思います。これからも『5つのK』を忘れずに、前に進んでください」

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「5つのK」の大切さについて語る高橋・代表理事

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事業成果報告会の終了後には関係者による記念撮影も行われた

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