復興応援キリン絆プロジェクト

水産業復興支援事業

活動について

各地域での活動

活動レポート

HOME
活動について
岩手県
豊かな漁村創生プロジェクト

豊かな漁村創生プロジェクト

漁業の現場を産業へ 浜の「文化」を食卓に届ける挑戦

_MG_1417.jpg

これまで産地でしか触れる機会のなかった本物の漁師料理や漁業者のリアルな生活を、かけがえのない地域資源として消費者に発信する「地域資源利活用推進協議会」。生産者と消費者をつなぐ架け橋になるプロジェクトが水産業の未来を切り拓く。

「漁師たちの日常に存在する価値ある文化を消費者に届けたい」

漁業の現場に眠る面白い独自文化

 「以前お世話になった漁師さんのご自宅でご飯をご馳走になった時、"あるもので作った"と切り出して出てきたのが、アワビがゴロゴロ入ったカレーでした。なんとも贅沢で感激していると、漁師さんたちは『肉は買わなきゃいけないからアワビで我慢しろ』という。こうした漁業の現場で育まれている独自文化は、実はすごく面白い」。そう語るのは、大船渡市の越喜来(おきらい)地区で2013年に発足した「地域資源利活用推進協議会」で会長を務める八木健一郎さん。

 大船渡市は、黒潮と親潮が交じって豊かな漁場を形成する三陸海岸の南部に位置する。沿岸部は複雑に入り組んだリアス式海岸を有し、その一角を成すのが越喜来湾である。八木さんは、2002年からこの地で鮮魚をインターネット販売するビジネスを始めた。「せっかく売るのだから、漁業の現場で実際に体験した面白い文化を消費者に伝えられたらと、船の上にライブカメラを積んで漁の映像を配信するなど、様々なアイデアを盛り込みました。21世紀は世界中の食べ物が手に入る飽食の時代です。美味しいものを食べたいという消費者のニーズが高まっているにもかかわらず、漁業の市場は年々落ち込んでいる。その矛盾の原因は"物語"が欠如していることだと思います。食べ物の背景にある"生産現場の物語"をきちんと伝えることで、消費者が手に入れたいと思ってくれると考えました」。こうして始めたビジネスは周りの生産者を巻き込み、少しずつ成果を出し始めた。10年という長い年月を経て、これからの展望がようやく開けた時、大船渡市を津波が襲った。

IMG_0059.jpg

長年あたためてきた構想をかたちに

 「港の近くにあった事務所は津波にのみ込まれ、床板1枚しか残っていませんでした。沿岸地域は壊滅状態で、漁業も加工会社も完全にストップしてしまったのです。絶望的な状況でしたが、とにかく動き出すしかないと思いました」。

 八木さんは被災してからわずか1ヶ月で、仲間の漁業者を集めて操業再開に向けて動き始めた。「漁業も加工会社もいっぺんにストップするなんてそうそうないことです。逆に、こういう時だからこそ漁業者も加工会社の方も一緒になって話し合う機会だと思いました」。そこから、八木さんと漁業者が一体となった新しい漁業づくりが始まった。「漁業者の方と、漁業の再建に向けて話し合いを重ねる中で、私の故郷でもある静岡県の由比漁港に、みんなで視察に行く機会に恵まれました。ほかの地域の漁業を知ることで被災する前から私が伝えたかった、その土地、その漁港ならではの文化の面白さを共有することができたのは、すごく大きかったと思います」。

 八木さんの取り組みに「復興応援 キリン絆プロジェクト」の支援の話が持ち上がったのは2012年12月。地域ブランドの育成や6次産業化*の支援、そして将来の担い手・リーダー育成支援を主軸とした事業が支援の対象であり、八木さんが取り組む二つの活動が選ばれた。一つは漁師料理をCAS凍結して全国に届ける「浜の台所CASセンター」の建設、もう一つは地域の漁業者と消費者をつなぐ拠点となる観光交流施設「越喜来番屋」の建設である。いずれも生産者が提供する商品の価値を消費者に正しく伝えるための重要な拠点になる。

*6次産業化とは1次産業である生産業が生産だけにとどまらず、2次産業の加工、3次産業の小売り、サービスなどまでに踏み込むことを指します。

_MG_1002.jpg

 漁業の現場で日常的に行われていることは消費者にとっては面白く価値あるコンテンツである。その面白さを伝えられる手段があれば、消費者と強く結びつくことができるだけでなく、その可能性を世界中にも広げることができる。「震災以降の最初の2年は、あちこちで山積した問題を整理するための時間でした。キリン絆プロジェクトでご支援いただいてからさらに時が経ち、ようやく基盤が整ってきたところです。この取り組みは、図らずも震災復興というかたちでスタートしましたが、日本の水産業の先進事例になる新しいモデルになると考えています」と八木さんは力強く語る。越喜来で生まれた 新しい漁業は、ようやく本格的にスタートした。

浜の女性たちが持ち寄った個性豊かな漁師料理

_MG_0814.jpg

 大船渡市の地域資源の発信としてまず取り組んだのが、「漁師のおつまみ研究所」。越喜来には水揚げの手伝いやカキやホタテの殻剥きなどをして水産業に関わる女性がたくさんいる。「漁師のおつまみ研究所」は震災直後に働き口を失った浜の女性たちが長く働ける場として考案され、地域の漁師料理を通じて浜の文化を消費者に発信するために開設された。越喜来湾で獲れた魚の美味しい食べ方を一番知っている地域の女性たちが、それぞれの家庭で代々作られてきた漁師料理を持ち寄り、メニュー開発を行う。従来は家の外に出ることのなかった独自のレシピを交換し合うことで刺激にもなり、地域の食材を使った新しいアイデア料理が次々と誕生した。これまで200種類以上のメニューが生まれ、今は実際の販売に向けて採用する メニューを絞り込んでいる段階である。
 「消費者が求めているクオリティを実現できるのは生産者です。生産者は消費者が求めていることを知ることで、もっと広い視点で商品の価値を高めていくことができるのではないかと考えています」と八木さんは語る。

地域ならではの文化や温もりをとじ込める最新の凍結技術CAS

_MG_0734.jpg

 「浜の台所CASセンター」の中で、調理場の横に設置されているのがCAS(Cells Alive System)という最新の凍結システムを持つ巨大な冷凍庫である。急速冷凍装置に、微弱な振動を与えるCAS装置を組み合わせると、鮮度、旨味、色味などを保持したまま食材を凍結させることができる。朝に水揚げしたばかりだというサンマは細かい結晶がついたような状態で凍結。このサンマは解凍しても生の物と同じように刺身でも食べることができる。しかも細胞組織を壊さず均等に凍結することが可能で脂質が熟成されて旨味が増す。

 CASの技術はそれだけではない。生の物だけでなく煮物や揚げ物などの料理にも使えることから、「漁師のおつまみ研究所」で作った様々なメニューも凍結保存できる。コロッケは揚げたてのようにサクサクに、たこ焼きはふっくらと仕上がった。
 「もともと鮮魚を扱っていたので"冷凍"には抵抗があったのですが、CASの圧倒的な技術にはとにかく驚きました。これで浜の文化をとじ込めることができると確信しました」と八木さんは話す。

_MG_0764.jpg

 実はCAS導入の話が持ち上がったのは震災の2ヶ月後、漁業者からの提案だという。八木さんと漁業者たちが集まり、これから漁業を立て直していくために何が必要かを議論し合う場が設けられた。その際に震災前に物流に問題を抱える他県のCAS導入事例がテレビで特集されていたのを見た漁業者が「CASがあれば新鮮な魚を全国に届けられる」とアイデアを出した。八木さんはすぐに動き出し、震災から5ヶ月後には仮社屋にしていたプレハブにCASが納品された。「震災の何年も前から漁業者と話し合いを重ねていたことで、理想的な漁業のかたちをみんなで共有できており、同じ目的に向かってアイデアを出し合うことができました。CASを導入したことで、理想的な漁業のかたちを実現する未来への切符を手に入れた気分になりました」。

 CASの導入により復興に向けて大きな一歩を踏み出したが、八木さんは「CASは漁師料理を多くの人に伝えるための手段です。大事なのはCASを使って何を凍結させるか」だとくり返す。最新の凍結技術を使っても市場からモノを仕入れていては市場以上のクオリティを出せない。地域が持つ資源の可能性を追求し、消費者を知ることで、必要とされているものを生み出していくことに目的があるのだ。

「浜の文化」を体験できる「越喜来番屋」の再建

_MG_1082.jpg

 「越喜来番屋」は、元々は番屋と呼ばれる地域の漁業者が漁に出る準備を行うための作業小屋に、一般の人も訪れることができるようにと、観光交流のためのスペースを併設した新たな番屋である。「震災前に参加者を募り、番屋を拠点に"朝ご飯を獲りにいく"ツアーを企画したところすごく反応が良くて。その反応を見た時、改めて漁業の現場は消費者にとって魅力的なコンテンツであふれていることを確信し、もっと多くの人に漁業の現場を体験してもらいたいと思いました」と八木さんは語る。

 あえてエイジング加工を施して昔ながらの趣を残した「越喜来番屋」は二つのスペースに分かれている。一つは漁業者の作業スペースで、もう一つは訪れた人が自由に行き来できる交流体験スペースになっている。観光客が漁業者の作業を間近で見たり、漁業者と交流して漁師料理も堪能したりすることで、漁業者の日常はエンターテインメントになる。また漁業者にとっても、訪れた人に見て感動してもらうことがモチベーションアップにつながるのである。漁業者が中心となって運営する「越喜来番屋」は、地域の新しい観光資源になる可能性を秘めた施設として注目を集めている。

〜復興から未来へ〜 八木健一郎さんが描く未来

_E1A0404.jpg

 震災前から生産者と消費者がつながる仕組みを作ることに取り組んできました。今では越喜来を訪れてくれる人が少しずつ増え、それを受け入れる態勢も徐々に整いつつあります。漁業の現場が開かれ、漁業者が消費者の立場で考えられるようになり、越喜来の漁業は変わりました。これからは「浜の台所CASセンター」や「越喜来番屋」を無理なく運営し、いかに経済として成立させていくかが重要になってきます。

 そして越喜来という地域が一つのモデルになり、ほかの地域の発展に貢献できたらいいですね。いわば壮大な社会実験をさせてもらっているのだと思います。震災をきっかけに、これまで変わりたくても変われなかった生産者が動き始めました。東北で育まれようとしているのは次世代型の産業構造です。生産者と消費者が活発に交流することで、食を通じて地域が活性化し、社会をより良い方向に変えていきたいです。

プロジェクトから生まれた商品

浜の文化まで味わえる獲れたての食材を使った漁師メニュー

カレイ.jpg

下処理済高鮮度魚介類
生産者の神経〆技法導入、浜での下処理、CAS凍結により、
ハイクオリティ魚介を容易にいつでも使用することが可能に。
※画像は「煮魚用内臓抜きカレイ」を掲載しています。

モウカの星盛り付け例.jpg

超高鮮度刺身類
今まで産地でしか食べられなかった超高鮮度を要求される特長的な刺身類を
CAS施設と生産環境の見直しによって安定供給することが可能になりました。
※画像はCAS凍結した「モウカの星(モウカザメの心臓)」を掲載しています。

鮑カレー蟹ばっとう.jpg

高次加工惣菜類
アワビカレーやカニばっとう(毛ガニのひっつみ)など、
番屋で食べる漁師めしを温めるだけで、いつでも愉しめます。
※画像は「アワビカレー」、「カニばっとう」を掲載しています。

お問合せ
三陸とれたて市場
所在地:岩手県大船渡市
三陸町越喜来字杉下75-8
TEL:0120-369-841
<URL>sanrikutoretate.com
<Facebook>sanrikutoretate.com

ページの先頭に戻る