復興応援キリン絆プロジェクト

水産業復興支援事業

活動について

各地域での活動

活動レポート

HOME
活動について
宮城県
宮城県産「殻付きカキ」ブランディングプロジェクト

宮城県産「殻付きカキ」ブランディングプロジェクト

地域ならではのストーリーが付加価値となる、漁業者と宮城県漁業協同組合が
一体となり挑戦する「殻付きカキ」のブランディング

261A7223.jpg

宮城県を代表する水産物であるカキは、津波で養殖に必要な施設を流され、多くの販路を失った。売上は約1/5に減少、多くのカキ養殖漁業者が廃業へと追い込まれる中、「宮城県漁業協同組合」は起死回生の策として、養殖方法を見直した「殻付きカキ」のブランディングで復興への新たな道を切り拓いている。

「生産者が一つひとつ丁寧に磨き上げた
『殻付きカキ』の魅力を消費者に正しく伝えたい」

「殻付きカキ」の本格生産でゼロからのスタート

 入り江の多いリアス式の地形を有する宮城県沿岸部では、穏やかな湾を利用したカキ養殖が盛んに行われてきた。しかし津波は豊かな漁場に容赦なく襲い掛かり、養殖施設はことごとく流されてしまった。種カキから育てるカキ養殖は収穫までに最低でも1年はかかるためすぐには出荷できず、販売シェアは大きくダウン。震災前は宮城県内に800人以上いたカキの養殖業者の半数近くが休業や廃業に追い込まれてしまった。

 宮城県のカキ養殖を復興するため、宮城県漁協が目をつけたのが「殻付きカキ」である。震災前、宮城県産のカキはむき身が主流で9割以上が宮城県漁協の共販制度*を通して販売されていた。むき身のカキの生産は量をつくることで漁業者たちは利益を上げていた。その結果、養殖施設は密集し、一部では漁業者の船も通れないほどで、問題視する声も上がっていたという。宮城県漁協としても「このままでは良くない」と認識しつつ、一度つくり上げた体制をすぐに変えることはできずにいたところに、震災が起こったのだという。

 「津波ですべて流されたことで、カキ養殖はゼロからのスタートとなりました。被害も大きく、苦労も多かったのですが、震災を変革の機会と捉え、新たな体制づくりに乗り出しました。まず取り掛かったのはカキの養殖棚の改善です。密集して養殖していた間隔を開け、一つひとつの身が充分に育つようにつくり変えました。また、近年はオイスターバーやカキ小屋が全国的に増え、『殻付きカキ』の需要が高まり、むき身よりも殻付きのほうが高値で取引されることを受け、『殻付きカキ』の生産に本格的に取り組むことにしたのです」と宮城県漁協の経済担当理事・阿部誠さんは話す。

*共販制度とは、生産者の水産物を漁業協同組合に集荷し一括で入札にかける取引制度のこと。
日本有数のカキの養殖地ならではのこだわりを全国にアピール

 ひと口に「殻付きカキ」の生産といってもそれは並大抵のことではない。「殻付きカキ」はむき身のカキに比べ手間ひまがかかるのである。海の中で育てている時から殻を傷つけずにきれいに保てるよう、漁場を整備し、こまめに手入れしなければならない。「殻付きカキ」の生産には、各地域の漁業者の協力が不可欠だった。宮城県漁協と漁業者の間で話し合いが重ねられ、まずは気仙沼市「唐桑(からくわ)」、石巻市「長面浦(ながつらうら)」、東松島市「鳴瀬」の三つの地域で「殻付きカキ」の本格生産が始められることになった。

261A7643.jpg

  震災前、「宮城県産」として販売されていたカキだが、それぞれの地域のカキには特長がある。「唐桑」のカキは、「もまれ牡蠣」とも呼ばれ、湾の穏やかな海で1年育てたあと波の荒い外海で2〜3年かけて大粒の身に育てあげる。ふっくらした乳白色で甘みが強いのが特長。「長面浦」のカキは、周囲を山々に囲まれた漁場で植物プランクトンを豊富に取り入れることができ、1年ほどで食べ頃のカキに育ち、雑味の少ない味わい。そして、国内屈指の生産量を誇るカキ養殖場の「鳴瀬」では、一つひとつは小ぶりながらふっくらとした身で濃厚な甘みを持つ品質の良いカキが育つ。

 宮城県漁協では、こうした湾の特性や地形の違いで味もかたちも異なるカキをもっと広くアピールする取り組みも始めた。「それまで『宮城県産カキ』としてひとくくりに販売していた共販制度では、カキの違いや漁業者のこだわりを消費者に伝えることができませんでした。『殻付きカキ』は実際に手間ひまがかかりますが、その手間ひまも合わせて、漁業者のこだわりや地域の特性をストーリーとしてきちんと伝えることで、宮城県のカキ全体の価値向上にもつながると考えています」と阿部さんは話す。

 各地域のカキの魅力を多くの人に伝えるため、都心でのPRも始めた。2015年1月、東京のオフィス街の中心・大手町でおよそ2ヶ月半のイベントを開催。「宮城牡蠣の家(かきのや)」と題したカキ小屋には、宮城県産のカキをはじめ、ホタテやアナゴ、ワカメといった東北選りすぐりの水産物が揃った。イベントの目玉はもちろん、宮城県沿岸部の「唐桑」「長面浦」「鳴瀬」の三つの地域で獲れたカキ。これらのカキを「プレミアムブランド牡蠣」として販売し、連日多くの来場者で賑わった。「イベントでは、たくさんの方に宮城県産のカキを知っていただくことができました。『プレミアムブランド牡蠣』の反応も良く、各地域に興味を持ってくださる方が多かったのが印象的でした」と阿部さんは話す。

 宮城県内で「殻付きカキ」のブランディングに取り組む地域は現在8ヶ所あり、今後はほかの地域にも「殻付きカキ」のブランディングを展開していく。さらに、様々な地域のカキを食べられるイベントを今後も継続して展開していく予定。「イベントは消費者に宮城 県産のカキをアピールできるだけでなく、漁業者と消費者がつながる貴重な機会です。漁業者は消費者が目の前で自分たちの育てたカキを食べている様子を見ることが自信になります。そうやって喜びややりがいを感じられることが、後継者を育てることにつながっていくと思うのです」。宮城県漁協と漁業者が一丸となって取り組むカキのブランディングは、今後もますます連携を強めて展開していく。

漁業者が中心となって取り組んだ養殖方法の改革

261A7340.jpg

 「殻付きカキ」の本格生産に最初に取り組んだのが、宮城県の最北端に位置する気仙沼市唐桑地区である。唐桑でカキの養殖漁業を行う畠山政則さんは、率先して仲間の漁業者に改革を呼びかけた。「質より量で勝負していたそれまでのやり方を変え、 市場でより高値で取引される『殻付きカキ』を生産するためには漁場の整備が必要でした。生産量を制限して一つひとつのクオリティを高める新しいやり方に、若い漁業者を中心に賛同してもらえたことで取り組むことができました」と畠山さんは語る。

 津波でカキの殻をむく処理場が流されてしまったため、設備の制限から震災直後は殻付きしかできなかったというのも理由の一つだという。「震災が起きた1ヶ月後に、石巻市で種カキが少しだけ残っていると聞き、急いで確保に向かいました。一刻も早く漁業を再開しなければ漁業者が海を離れてしまうと思ったのです」と話すのは宮城県漁協唐桑支所の支所長・吉川弘さん。こうして震災後に養殖したものは1年後には「殻付きカキ」として出荷したという。

kaki.jpg

 唐桑地区で獲れる「もまれ牡蠣」は3年もので、殻からこぼれ落ちそうなほどの大ぶりな身が特長的。一帯を山に囲まれ、植物プランクトンが豊富な漁場で、より一層の手間ひまをかけ育てている。湾の中で種カキを育てる段階で質の良いカキ以外を間引き、カキが養分を取り入れやすいように耳吊り式で間隔を開けながら育てる。震災前までは、量を獲るために密集して育てていた養殖方法を改善した。それから1年ほど成長したものを温湯処理し付着物を取り除き、じっくり時間をかけてふっくらとした身に育てていく。そして、カキの成長に合わせて漁場を移動することで大きさと旨味のバランスがとれた品質の良いカキができる。

 「手間を惜しまず育てたカキを評価されることが、何より嬉しいです。『殻付きカキ』の生産を始めたことで、港の復興に向けてスムーズに動き出せたと思います」と畠山さんはいう。こうした生産者の熱意や行動が「ストーリー」となって地域ならではの付加価値を生む。

地域ごとの特性を活かした宮城県産カキを全国へ

別添A_宮城県漁協_261A3895.jpg

「宮城牡蠣の家」にて(東京・大手町)

 各地域で生産された「殻付きカキ」は宮城県漁協直営のインターネットの卸市場「おらほのカキ市場」で販売されている。「おらほ」とは方言で「私たち」という意味。今までカキは市場で値づけされていたが、「おらほのカキ市場」では仲買人や飲食店、流通業者などが直接注文でき、買い手がその価値を評価し価格を設定できる新しい販売方法である。

 さらに、都市部で開催されるカキイベントにも宮城県漁協が中心となって積極的に参加。震災で縮小してしまった販路の拡大に向けてPRを行っている。「震災を機に地域ごとのブランディングに力を入れてきましたが、イベントにお越しいただいたお客様の反応を見て、思い切って方向転換をして良かったのだと思いました。反応がダイレクトに伝わるからこそ反省点も多くあります。漁業者の方と一緒に宮城県のカキを創り上げたいです」と宮城県漁協の阿部さんは意気込みを語ってくれた。今後は宮城県だけでなく全国のカキの産地が参加するイベントにも参加していく予定。今後の「殻付きカキ」の展開に期待が高まっている。

〜復興から未来へ〜 宮城県漁業協同組合と漁業者が描く未来

261A7723.jpg

(写真左から、宮城県漁業協同組合 気仙沼総合支所 唐桑支所 支所長・吉川弘さん、同 唐桑支所運営委員会 委員長・畠山政則さん、同 経済担当理事・阿部誠さん)

 震災を機に始めた地域ごとのブランディングは、少しずつ認知度が高まっている実感があります。今後は地域間で自然にライバル意識が芽生えて、宮城県の中でも切磋琢磨し合えれば良いですね。とはいえ、漁業の現場では設備不足や働き手不足などまだまだ問題を抱えています。販路が順調に拡大しても、漁業者にとって負担になってはいけません。一つずつ問題を解決しながら先に進みたいと思っています。
 漁業を発展させていくうえで大事なのは、宮城県漁協と漁業者の昔から変わらない確固たる信頼関係です。カキの養殖に携わる漁業者は皆さんがこだわりを持って取り組んでいて、これまでそういった取り組みが表に出ることはありませんでしたが、発信することで一人でも多くの人に知っていただくことが重要だと感じています。価値がきちんと評価され、漁業自体を魅力的なものに変えていくことが、次の世代を育てていくための我々の責任だと思うのです。

宮城県「殻付きカキ」MAP

宮城県漁業協同組合と漁業者がブランディングに取り組む各地の「殻付きカキ」

 カキマップ.jpg

お問合せ
宮城県漁業協同組合
所在地:宮城県石巻市開成1-27
TEL:0225-21-5746
<URL>jf-miyagi.com
<電子卸市場>miyagi-oyster.jp

ページの先頭に戻る